スイートリディアは走ってくれるだろうか

キャロットクラブで出資している2歳牝馬の話です。スイートリディア(2025年募集72番・ 父アドマイヤマーズ×母クラシックリディア)は、この記事を書いている時点でまだ1度も走っていません。 9月11日に栗東へ戻り、10月4日の京都4レース(2歳新馬・牝馬限定・芝1400m)で、北村友一騎手を背にデビューします。枠順は2枠3番に決まりました。 デビュー前の馬について語れることは本来そう多くないのですが、 せっかく募集馬のデータを集めているので、 自分の馬をその物差しに当てたらどう見えるのか、正直にやってみました。

スイートリディアの募集時の馬体写真
募集時(2025/08/19・NFイヤリング)の馬体写真。 キャロットクラブより許可をもらって転載しています。

測尺は、きれいに全部まんなかだった

まず1歳8月の測尺から。279頭(2017〜2022年募集の牝馬)の中で、スイートリディアがどのあたりにいるかを並べます。

項目スイートリディア大きい順の順位牝馬279頭の中央値
馬体重438kg279頭中 129番目437kg
体高154cm279頭中 121番目153.5cm
胸囲174cm279頭中 140番目174cm
管囲19.8cm279頭中 95番目19.6cm
募集総額3,000万円235頭中 77番目2,600万円

募集時の馬体重の分布(2017〜2022年募集の牝馬279頭)

37039041040頭スイートリディア ▼430450470490510530

募集時の馬体重の分布(2017〜2022年募集の牝馬279頭): 370 頭数 4頭、 380 頭数 7頭、 390 頭数 14頭、 400 頭数 22頭、 410 頭数 31頭、 420 頭数 36頭、 430 頭数 40頭、 440 頭数 23頭、 450 頭数 38頭、 460 頭数 22頭、 470 頭数 18頭、 480 頭数 14頭、 490 頭数 4頭、 500 頭数 2頭、 510 頭数 3頭、 520 頭数 0頭、 530 頭数 1頭

横軸は募集時の馬体重(kg・10kg刻み。目盛りは20kgおき)。色の濃い階級がスイートリディアの入るところで、 分布のちょうど山のてっぺんにあたります。

見事なまでにまんなかです。とくに馬体重は、牝馬でだけ成績と結びつく測尺なので一番気にしていたのですが、438kgは牝馬の中央値437kgのちょうど1kg上。上でも下でもない、ど真ん中でした。 価格も、体高も、胸囲も、管囲も、揃って平均的。 正直なところ、この表を作ったときは少し笑ってしまいました。 これほど何の主張もない数字が並ぶことがあるのかと。

母は堅実に走る馬を出している。でも、それは当てにならない

では血統はどうか。母クラシックリディアの産駒は、実はよく走っています。 2021年生まれのアバンデルが14戦2勝で4,506万円、2022年生まれのウィルサヴァイブが 18戦2勝で5,484万円。走った4頭のうち3頭が勝ち上がっていて、賞金の中央値は キャロット全体の水準を上回ります。

ここに期待したくなります。というより、私は最初これを一番の材料だと思っていました。 ところが調べてみると、先に生まれた半兄姉がどれだけ稼いだかは、 その後に生まれた馬の成績をほとんど予測しません。 牝馬で順位相関+0.064、p値は0.308。 賞金の多い半兄姉を持つ群と、少ない半兄姉を持つ群で、本人の成績はきれいに入れ替わってしまいます。

効くのは「重賞を勝った半兄姉がいるかどうか」という一点だけで、それも牝馬限定。 該当する牝馬は本人も重賞に届く率が10.3%、いない牝馬は2.7%と差が出ます。スイートリディアの半兄姉に重賞勝ち馬はいないので、ここは残念ながら低い側です。

ひとつだけ、平均を超えていたもの

測尺も価格も血統も中央値。じゃあ何も言えないのか——と思っていたところで、 ひとつだけ平均より上のものが見つかりました。北海道を出た時期です。

測尺から本州入りまでの日数の分布(2017〜2022年募集の牝馬262頭)

18024040頭スイートリディア ▼300360420480540

測尺から本州入りまでの日数の分布(2017〜2022年募集の牝馬262頭): 180 頭数 7頭、 210 頭数 31頭、 240 頭数 34頭、 270 頭数 40頭、 300 頭数 29頭、 330 頭数 25頭、 360 頭数 42頭、 390 頭数 25頭、 420 頭数 14頭、 450 頭数 4頭、 480 頭数 4頭、 510 頭数 1頭、 540 頭数 2頭、 570 頭数 4頭

横軸は測尺日から本州入りまでの日数(30日刻み・目盛りは60日おき。600日より遅い数頭は右端にまとめています)。 さきほどの馬体重と違い、こちらは山のてっぺんより左(=早い側)にいます。

スイートリディアは2026年6月13日にNF天栄へ移動しました。1歳8月の測尺日から数えて298日、 約9.8か月です。262頭の牝馬を早い順に並べると111番目——ちょうど真ん中(131番目)より20頭ぶん早い側にいます。 これまで全部まんなかだったので、初めて平均を超えたことになります。

北海道を出る時期は、何を意味するのか

なぜこれが材料になるのか。262頭を移動の早さで4等分すると、こうなります。

本州入りの早さ別・獲得賞金の中央値(2017〜2022年募集の牝馬)

1,250万円6.3〜8.5か月76.9%1,047万円8.6〜10.2か月67.7%716万円10.3〜12.4か月69.2%244万円12.4〜38.2か月47.8%

本州入りの早さ別・獲得賞金の中央値(2017〜2022年募集の牝馬): 6.3〜8.5か月 獲得賞金の中央値 1,250万円(頭数65頭)(76.9%)、 8.6〜10.2か月 獲得賞金の中央値 1,047万円(頭数65頭)(67.7%)、 10.3〜12.4か月 獲得賞金の中央値 716万円(頭数65頭)(69.2%)、 12.4〜38.2か月 獲得賞金の中央値 244万円(頭数67頭)(47.8%)

早い群ほど走っています。一番早い群は賞金中央値1,250万円・ 勝ち上がり76.9%、一番遅い群は244万円・47.8%。 順位相関は-0.262(p<0.0001)で、牝馬でいちばん効くとされる募集時馬体重(+0.230)より強い。 しかも馬体重を統制しても-0.206(p=0.0009)が残るので、 体重の言い換えではありません。牡馬でも同じ向きに出ていて、 牡は測尺がまったく効かない(馬体重×賞金 -0.012・p=0.86)中で、これだけが効きます。

理由は考えてみれば当たり前で、これは馬の能力の指標ではなく、 現場の判断が日付になって現れたものだからです。 牧場が本州に送り出すのは「態勢が整った」と判断したからで、北海道に残るのは 成長を待つ必要があるか、どこかに不安があるから。プロが毎日その馬を見て下している評価が、 移動日という形で外から見えている、というだけの話です。

父アドマイヤマーズという追い風

ここまでは牝馬279頭という物差しの話でした。 その物差しの外に、もうひとつ楽しみにしている材料があります。父のアドマイヤマーズです。

アドマイヤマーズ自身は、2歳の6月にデビューしてそのまま4連勝、暮れの朝日杯フューチュリティステークスまで 無敗で勝ち切った馬でした。3歳でNHKマイルカップ、その年の暮れには香港マイルも勝っています。 2歳の夏からもう走れていた、早くから完成度の高いマイラーです。

その初年度産駒から、いきなりエンブロイダリーが出ました。スイートリディアと同じ牝馬で、2歳6月にデビューし、11月には芝1400mの1勝クラスを勝ち、 3歳で桜花賞と秋華賞、4歳の今年はヴィクトリアマイルまで勝っています。 2025年のJRA最優秀3歳牝馬です。父の産駒として走った最初の世代から、牝馬のG1馬が出たことになります。

アドマイヤマーズの種付け料の推移(種付けした年ごと)

300万円20211年目250万円20222年目250万円2023←スイートリディア250万円20244年目500万円20255年目500万円20266年目

アドマイヤマーズの種付け料の推移(種付けした年ごと): 2021 種付け料 300万円(1年目)、 2022 種付け料 250万円(2年目)、 2023 種付け料 250万円(←スイートリディア)、 2024 種付け料 250万円(4年目)、 2025 種付け料 500万円(5年目)、 2026 種付け料 500万円(6年目)

横軸は種付けした年(産駒はその翌年に生まれます)。スイートリディアが種付けされたのは2023年(供用3年目)。 数字はnetkeibaの種付け料推移から。

市場の評価もはっきり動きました。スイートリディアが種付けされた2023年の種付け料は250万円。それが初年度産駒の活躍を受けて、いまは500万円と2倍になっています。 種牡馬ランキング(中央の産駒の獲得賞金順)も、2024年の80位から 2025年は23位まで上がりました。 言い方を変えると、スイートリディアは父の評価が跳ね上がる前に配合された世代です。 出資者としては、ちょっと得をした気分になります。

正直に書いておくと、初年度産駒の勝ち上がり率そのものは72.9%(59頭出走・43頭勝ち上がり)で、 成績の出そろった他の種牡馬の初年度(74頭)の中央値72.0%とほぼ同じです。 「どの子もよく勝つ父」というより、勝ち上がりは平均的で、そこから上に突き抜ける子が出る父。 キャロットのマーズ産駒も、出走した3頭のうち2頭が勝ち上がっています。スイートリディアの世代(2024年生まれ)はまだデビューが始まったばかりで、 いまのところ24頭が走って3頭が勝ち上がっています。

ちなみに育成牧場の近況には「父産駒らしく少しワガママなところ」という一文がありました。 早くから走れる父の気の強さを、ちゃんと受け継いでいるのかもしれません。

いまのところの見通し

材料を並べ直すと、スイートリディアはこうなります。測尺は平均的、価格も平均的、 母系は「よく走る半兄姉がいるが、その情報自体に予測力がない」。 そして移動時期は平均より早い側で、父は初年度からG1牝馬を出して評価が倍になった種牡馬。

移動が早い側の牝馬は、勝ち上がり率が67.7% (牝馬全体は62.7%)、賞金の中央値が1,047万円。 重賞まで届く確率は、正直に言えば数%です。半兄姉に重賞勝ち馬がいない分を差し引くと3%前後。 これは特別悪い数字ではなく、キャロットの牝馬としてごく普通の期待値です。

つまり「勝ち上がりは十分に期待していい。重賞は夢を見る領域」というあたり。 派手な結論ではありませんが、データに当ててこれ以上のことは言えません。 それでも、全部まんなかの馬に平均超えの材料がふたつ見つかったのは、 出資者としては素直に嬉しいところです。重賞の数%を「夢」に留めない何かがあるとしたら、 それはたぶん父から来るのだろうと思っています。走ってくれるかもなあ、と思いながら見ています。

気をつけていること

デビュー戦が決まった

ここからは近況の話です。スイートリディアは6月25日に栗東の高橋亮厩舎へ初めて入厩しました。 測尺日から310日で、これも牝馬258頭の中では早い順に112番目(中央値は329日)と、本州入りと同じく早い側です。 入厩直後に先生からは、北海道ではピリッとしたタイプに見えたがトレセンでは大人しく行儀が良い、 動きも素軽くて楽しみ、というコメントが出ていました。 7月8日にはゲート試験に一発で合格しています。

そのあとNFしがらきへ戻って、夏の間じっくり乗り込みました。 坂路で15-15から始めて、8月には終いを13〜14秒まで伸ばし、1日2本の登坂もこなしています。 9月に入ると15-14を週2回コンスタントに乗れるようになり、牧場からは 「息遣いも良くなってきた」「堪えるようなこともなく順調」という報告が続きました。 暑い時期も体調は安定したまま、ここまで予定どおりに来られたのは何よりです。

そして9月11日に栗東へ帰厩。9月17日には坂路で55秒1−40秒1−26秒2−13秒6の追い切りを行い、10月4日の京都・2歳新馬(牝馬限定・芝1400m)に出走予定と発表されました。 新しい開催の開幕週で、相手は牝馬だけ。父自身はマイルで結果を出した馬で、産駒の芝の平均出走距離も1,600m台。1400mは無理のない距離ですし、 エンブロイダリーが2歳時に勝ったのと同じ距離でもあります。

帰厩直後の先生のコメントは「動きが悪いわけではないが、もう少し乗り込んだほうが良さそう」という 慎重なものでした。牧場でも「一度実戦を経験してからかな」と言われていて、 完成しきる前にデビューを迎えるタイプなのは確かです。

この2週間で、ちゃんと変わってきた

ただ、そこから2週間の中身を追っていくと、私はけっこう前向きになれました。

9月25日はポリトラックで併せ馬を行い、6ハロン83秒1、ラスト1ハロン12秒3。 そして9月30日の最終追い切りは坂路で併せて56秒1−40秒7−26秒1−13秒2でした。 全体の時計だけ見ると2週前より遅いのですが、この日は馬場が重く、しかも馬なりです。 それでいて最後の1ハロンは2週前の13秒6から13秒2へ詰まっていて、 ラスト2ハロンも26秒1とむしろ速くなっています。 先生も「馬場が重いことを考えると合格点と言える内容」と話していました。

ほかにも良い話が続いています。9月24日のゲート練習では「練習のときに比べると出るのも速く」なっていて、 調教を重ねてもテンションが上がらず、おとなしくて扱いやすいとのこと。 そして「体は以前に比べて立派になっていますから」という一言もありました。 北海道にいた頃は「馬体が細くなりやすいタイプ」と言われていた馬なので、この言葉はかなり嬉しかったです。

最終追い切りのあとも、先生は「もう少しグッと前向きさが出てきてほしい」と話していて、 ここも伏せずに書いておきます。ただ、もともと育成牧場でも 「もう少し前向きさが欲しいと感じさせるくらいの落ち着き」と言われていた馬です。 初めての競馬で入れ込まないのは、それ自体が武器になります。使ってからの上積みもまだ残している、と思って見ています。

鞍上は北村友一騎手

そして何より嬉しかったのが、9月24日に発表されたデビュー戦の鞍上、北村友一騎手です。

デビュー21年目、JRA通算1,037勝、G1は11勝、重賞は47勝。 2025年は73勝でリーディング12位、今年もここまで45勝の17位と、第一線で乗り続けている騎手です。 代表馬のクロワデュノールには、2歳の新馬戦からデビュー11戦続けて乗り、G1馬へと育て上げました。 まだ完成していない2歳馬を、最初の一戦から先を見据えて乗れる騎手だと私は思っています。

舞台との相性も悪くありません。直近1年の競馬場別で、北村友騎手がいちばん勝っているのが京都です(210戦25勝・勝率11.9%)。 そして、うちの高橋亮厩舎の馬に乗ったときは13戦で1着1回・2着2回・3着3回、複勝率46.2%。騎手全体の複勝率(今年29.7%)よりずっと高く、 まだ13戦とはいえ、厩舎との呼吸は合っているように見えます。 (数字はnetkeibaの騎手データ、2026年9月30日時点)

前向きさがもう一歩で、使いながら良くなっていくタイプの馬にとって、 初戦でどんな経験をさせてもらえるかはとても大事です。 そこにこの騎手を依頼してもらえたのは、陣営の期待の表れと受け取っていいのではないでしょうか。 出資者としては、ここがいちばん大きなプラス材料だと感じています。

枠順は2枠3番に決まった

10月1日に出走が確定し、枠順も出ました。10月4日の京都4レース、11時20分発走。 16頭立ての2枠3番です。斤量は55kg、相手の15頭もすべて2歳の牝馬です。

悪くない枠をもらえたと思っています。開催2日目のAコースで、芝がまだ傷んでいない時期の内寄り。 外を回らされる心配が少なく、北村友騎手が馬の後ろで競馬を教えながら運ぶこともできる位置です。

正直に書くと、私はこの馬を初戦からいきなり、というタイプではないと思っています。 牧場では「一度実戦を経験してからかな」、先生も「まだこれから良くなってくるタイプ」。 ここまで読んできた近況は、どれも同じ方向を指しています。 だから結果がどうであっても、この一戦だけで評価を決めるつもりはありません。

それでも、期待はしています。坂路の終いは13秒6から13秒2へ詰まり、体は立派になり、 鞍上は北村友騎手、枠は内。デビュー前に揃えられる材料としては、十分すぎるくらい揃いました。 あとは無事にゲートを出て、最後まで走り切ってくれれば。 そのうえで少しでも良いところを見せてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

これから見るところ

馬体重は5月の444kgから8月には465kgまで増えました。 負荷を上げながら増えているので良い形に見えるのですが、育成期の体重の増え方が成績を予測するかを16頭で調べたところ、差は出ませんでした(増加量トップ2はどちらも未勝利、最小の馬はシンザン記念を勝っています)。 なので、この21kgは眺めて楽しむだけにしておきます。

あとは10月4日の当日の馬体重と、北村友騎手がどんな競馬をさせてくれるか。 先生の言うとおり「まずはこの条件でどんな走りを見せてくれるか」です。 データではなくスイートリディア自身の能力を直接に映す、最初の数字になります。

正直なところ、ここまで調べてきて分かったのは「ごく普通の牝馬です」ということでした。 それでも、測尺を眺めていた1年前より、いまのほうがずっと楽しみです。 数字が平均的でも走る馬は走りますし、何より、この馬がどんな競馬をするのかは まだ誰も知りません。デビューが待ち遠しいです。

成績は2026年9月時点。募集時データは2017〜2025年募集の全頭、 育成の節目はクラブの近況バックナンバーから集計しています。