リーディング上位の厩舎に入った馬は走るのか?

カタログをめくっていて、父や測尺と同じくらい気になるのが「どの厩舎に入るか」だと思う。 名前をよく聞く厩舎の欄を見つけると、それだけで少し評価が上がってしまう。 逆に知らない名前だと、良さそうに見えていた馬でも手が止まる。

では実際のところ、預け先の勢いは募集馬のその後とどれくらい関係しているのか。

2017〜2025年募集のうち、いま中央(JRA)に所属している594頭について、その馬の募集年の時点で担当調教師がJRAリーディングの上位に入っていたかどうかで分け、2026年9月時点の獲得賞金・通算成績と突き合わせた独自集計。

先に結論を書くと、ほとんど関係がなかった。 重賞に届く率も獲得賞金の中央値も、上位の厩舎かどうかでたいして変わらない。 それどころか線の引き方によっては、上位側のほうが数字が低い。 そしていちばんはっきり出た差は、期待とは逆向きの 「上位の厩舎に入った馬のほうが、そもそも出走にたどり着いていない」だった。

正直、書いていて拍子抜けした。ただ、こういう結果こそ載せる価値があると思うので、 弱い数字も逆向きの数字も隠さずに全部出す。

「上位の厩舎」をどう分けたか

分け方はできるだけ単純にした。そのうえで、ひとつだけこだわった点がある。

JRAは毎年、調教師をその年の勝利数の順に並べたリーディングを出している。 この記事では、その馬の募集年の時点でのリーディングで、担当調教師が上位何位までに 入っていたかだけを見る。基準は10位以内・20位以内・30位以内の3通りを用意した。 3つは入れ子になっていて、10位以内の馬は20位以内にも30位以内にも含まれる。

こだわったのは「募集年の時点で」というところだ。 出資を決める瞬間に手元にあるのは、その時点までのリーディングだけで、 その馬がこの先どう走るかも、厩舎がこの先どう伸びるかも分からない。 だから募集を検討している人が実際に見られる情報だけで分けることにした。 そうしないと「結果を見てから振り返れば当たっていた」という話になってしまって、 出資の判断材料としては読みようがない。

対象の馬はまだ1戦もしていない段階なので、この順位にはその馬自身の成績は一切入っていない。 「上位厩舎に入っているか」を募集時点のカタログを見ながら判定するのと、同じ条件になる。

成績の側は3つ見る。

もうひとつ大事な前置き。この記事はキャロットの募集馬がどの厩舎に入ったかの話であって、 調教師個人の優劣を測ったものではない。分けているのは「募集年のリーディングで上位に入っていたか」 という一点だけで、それ以上の細かい分類はしていない。

重賞に届く率は、ほとんど変わらない

まず重賞馬率から。3通りの線で切ると、こうなった。

リーディング順位別の重賞馬率(募集時点)

  • 厩舎が上位
  • 厩舎が上位外
8.05.910位以内厩舎が上位87・厩舎が上位外50710.34.720位以内厩舎が上位165・厩舎が上位外4298.15.130位以内厩舎が上位222・厩舎が上位外372

リーディング順位別の重賞馬率(募集時点): 10位以内は厩舎が上位が重賞馬率(%)8.0(頭数87頭)、厩舎が上位外が重賞馬率(%)5.9(頭数507頭)。 20位以内は厩舎が上位が重賞馬率(%)10.3(頭数165頭)、厩舎が上位外が重賞馬率(%)4.7(頭数429頭)。 30位以内は厩舎が上位が重賞馬率(%)8.1(頭数222頭)、厩舎が上位外が重賞馬率(%)5.1(頭数372頭)

3つの分け方は入れ子。10位以内の馬は20位以内・30位以内にも含まれる。

数字で並べるとこうなる。

募集時のリーディング厩舎が上位厩舎が上位外差の検定
10位以内8.0%(87頭中7頭)5.9%(507頭中30頭)p=0.4478
20位以内10.3%(165頭中17頭)4.7%(429頭中20頭)p=0.0108
30位以内8.1%(222頭中18頭)5.1%(372頭中19頭)p=0.1432

10位以内で切ると、8.0%対5.9%。p=0.4478で差とは呼べない。いちばん厳しい線で切って、いちばん差が出そうなところなのに、ほぼ横並びだった。 (p値は「差がまったくないとしたら、これくらいの偏りが 偶然出る確率」の目安で、大きいほど「偶然でも普通に起きる」という意味になる。)

差らしい差が出るのは20位以内の線だけで、10.3%対4.7%(p=0.0108)。 ところが30位まで広げると8.1%対5.1% (p=0.1432)に戻ってしまう。

10位で差がなく、20位で出て、30位でまた消える。線をどこに引くかで出たり消えたりするわけで、 「リーディングの順位と連動している」という形にはなっていない。 本当に順位が効いているなら、上位に寄せるほど差が大きくなるはずだ。

獲得賞金の中央値は、線を広げると逆に出る

重賞は稀な出来事なので、もっと日常的な指標でも見ておきたい。 獲得賞金合計の中央値はこうなった。

リーディング順位別の獲得賞金合計の中央値(募集時点)

  • 厩舎が上位
  • 厩舎が上位外
85678210位以内厩舎が上位87・厩舎が上位外50776479920位以内厩舎が上位165・厩舎が上位外42962783330位以内厩舎が上位222・厩舎が上位外372

リーディング順位別の獲得賞金合計の中央値(募集時点): 10位以内は厩舎が上位が獲得賞金合計の中央値(万円)856(頭数87頭)、厩舎が上位外が獲得賞金合計の中央値(万円)782(頭数507頭)。 20位以内は厩舎が上位が獲得賞金合計の中央値(万円)764(頭数165頭)、厩舎が上位外が獲得賞金合計の中央値(万円)799(頭数429頭)。 30位以内は厩舎が上位が獲得賞金合計の中央値(万円)627(頭数222頭)、厩舎が上位外が獲得賞金合計の中央値(万円)833(頭数372頭)

募集時のリーディング厩舎が上位厩舎が上位外差の検定
10位以内856万円782万円p=0.4146
20位以内764万円799万円p=0.2988
30位以内627万円833万円p=0.7533

10位以内は856万円対782万円。 該当側のほうが1割ほど高いが、検定はp=0.4146で、 差と呼べるほどのものではない。重賞馬率と同じで、いちばん厳しい線で切ってもこの程度だ。

20位・30位と線を広げると、今度は該当側のほうが低くなる。 30位以内では627万円対833万円で、 4分の3ほどの水準まで下がる。 ただし検定はp=0.7533で、「上位側のほうが低い」とは何も言えていない。 賞金は少数の大物と大量の0円組でばらつきが極端に大きいので、中央値が2割違っても 順位検定にはまったく出てこない。中央値の位置がずれただけ、という見方が正確だと思う。

いずれにせよ、「上位の厩舎に入ると賞金が増える」と言える数字は、どの線でも出なかった。 10位以内でわずかに上回るが誤差の範囲で、線を広げれば向きは逆になる。

いちばんはっきり出たのは、出走率の逆転

一方で、3本の線すべてで向きが揃った指標がひとつだけある。出走率だ。 しかもそれは、期待とは逆向きだった。

リーディング順位別の出走率(募集時点)

  • 厩舎が上位
  • 厩舎が上位外
75.980.910位以内厩舎が上位87・厩舎が上位外50778.280.920位以内厩舎が上位165・厩舎が上位外42973.484.130位以内厩舎が上位222・厩舎が上位外372

リーディング順位別の出走率(募集時点): 10位以内は厩舎が上位が出走率(%)75.9(頭数87頭)、厩舎が上位外が出走率(%)80.9(頭数507頭)。 20位以内は厩舎が上位が出走率(%)78.2(頭数165頭)、厩舎が上位外が出走率(%)80.9(頭数429頭)。 30位以内は厩舎が上位が出走率(%)73.4(頭数222頭)、厩舎が上位外が出走率(%)84.1(頭数372頭)

募集時のリーディング厩舎が上位厩舎が上位外差の検定
10位以内75.9%80.9%p=0.2796
20位以内78.2%80.9%p=0.4594
30位以内73.4%84.1%p=0.0015

3本とも上位側が低い。ただし差の大きさは線の引き方でかなり動く。 10位以内では75.9%対80.9%で5.0ポイント、20位以内では78.2%対80.9%で2.7ポイントしかなく、 どちらも検定は通らない(p=0.2796、p=0.4594)。

はっきり通ったのは30位以内の1本だけだ。73.4%対84.1%で10ポイント以上ひらき、p=0.0015。この記事で出てきた数字のなかでは、いちばん小さいp値になる。 そしてそれが「上位の厩舎に入った馬ほど、デビューまでたどり着けていない」という向きなのが、 正直いちばん意外なところだった。

3本のうち通ったのが1本だけである以上、強い主張にはできない。 ただ、向きが3本とも同じで、しかもいちばん幅の広い線でいちばん大きく出ているのは、 重賞馬率や賞金のように「線を動かすと向きごと入れ替わる」指標とは明らかに様子が違う。 ここだけは、偶然の揺れとして片付けにくいと思う。

なぜそうなるのかは分からない。厩舎ごとの預かり頭数の構成が違うのかもしれないし、まったく別の要因かもしれないが、 この集計からは決められないので、理由は書かないでおく。 数字としてこう出た、という以上のことは言えない。

出走率は「募集年が新しい馬ほど低く出る」指標でもある(まだデビュー前の馬がいるため)。 ただし後述のとおり、直近5年(2021〜2025年募集)だけに絞っても同じ向きが出ている。

直近5年だけで見ても、上位が強い形にはならない

古い募集ぶんが結果を引っ張っている可能性もあるので、2021〜2025年募集のJRA所属366頭だけでも同じ集計をした。

募集時のリーディング指標厩舎が上位厩舎が上位外差の検定
10位以内(n=50 / 316)重賞馬率4.0%(2頭)4.1%(13頭)頭数不足
賞金中央値444万円448万円p=0.8618
出走率66.0%74.4%p=0.2144
20位以内(n=97 / 269)重賞馬率9.3%(9頭)2.2%(6頭)頭数不足
賞金中央値538万円390万円p=0.5223
出走率69.1%74.7%p=0.2814
30位以内(n=141 / 225)重賞馬率6.4%(9頭)2.7%(6頭)p=0.0809
賞金中央値350万円588万円p=0.9745
出走率66.7%77.3%p=0.0249

重賞馬率は、直近5年だと重賞馬そのものが15頭しかいないので、 10位以内・20位以内の線では検定に足りる頭数にならない(数字は参考として載せてある)。

賞金中央値は、9年ぶんと違って向きが揃わない。 10位以内は444万円対448万円でほぼ同額、 30位以内は350万円対588万円で上位側が低いが、 20位以内だけは538万円対390万円と上位側のほうが高い。 ただしどれも検定は通らず(p=0.8618/p=0.5223/p=0.9745)、 頭数が減ったぶん中央値が動きやすくなっているだけ、と読むのが妥当なところだ。 どちらに転んでも、線の引き方ひとつで向きが変わる程度の差しかない。

一方、出走率は9年ぶんと同じ形になった。3本とも上位側が低く (66.0%対74.4%、69.1%対74.7%、66.7%対77.3%)、通ったのはやはり30位以内の1本だけ(p=0.0249)。 9年ぶんで見えた形が、直近5年に絞っても同じ場所に残っている。

要するに、古い募集ぶんを外しても「上位の厩舎だから走る」という形は出てこない。 出てくるのは、相変わらず出走率の逆向きだけだ。

実際にどんな馬がいたか

率の話ばかりでも面白くないので、重賞を勝った37頭を実際に並べておく。

594頭のうち重賞を勝ったのは37頭。 募集時点の担当調教師の順位で内訳を取るとこうなる。

重賞を勝った37頭の内訳(募集時点の担当調教師のリーディング順位)

7頭10位以内10頭11〜20位1頭21〜30位19頭30位外

重賞を勝った37頭の内訳(募集時点の担当調教師のリーディング順位): 10位以内 頭数 7頭、 11〜20位 頭数 10頭、 21〜30位 頭数 1頭、 30位外 頭数 19頭

37頭のうち19頭、半分以上が30位外の厩舎から出ている。母数を考えれば当然でもある(30位以内の厩舎に入るのは594頭中222頭で、 全体の37%)。 ただ、率でも差がついていない以上、ここは素直に「どちらからも同じくらい出る」と読める。

なお「30位外」といっても、19頭のうち17頭は 具体的な順位まで分かっていて、31位から163位まで幅広く散らばっている。 リーディングにまったく名前が出てこない(順位が付かない)のは2頭だけだ。下の表では、その具体的な順位をそのまま出している。

もうひとつ、賞金の分布を見ると分かりやすい形が出ている。

獲得賞金5億円超の6頭は、募集時の順位がばらばらに散らばっている

37頭のうち、獲得賞金が5億円を超えているのは6頭。その内訳は10位以内が1頭・11〜20位が2頭・30位外が3頭で、いちばん多いのは30位外だった。 最高額はエフフォーリア(2019年募集・一口7万円・鹿戸雄一(美浦)厩舎・募集時37位)の7億7,663万円。 以下、タスティエーラ(2021年募集・一口7万円・堀宣行(美浦)厩舎・募集時14位)の6億5,897万円、ヴェラアズール(2018年募集・一口4万円・渡辺薫彦(栗東)厩舎・募集時74位)の5億4,968万円と続く。 この6頭だけで、10位以内・11〜20位・30位外の3区分すべてに顔を出している。

募集時10位以内の厩舎からも大物は出ている。この区分の7頭でいちばん稼いだのはサートゥルナーリア(2017年募集・ 一口35万円・角居勝彦(栗東)厩舎・ 募集時3位)の5億2,358万円だ。 ただし一口35万円は37頭のなかで最も高い募集価格で、 回収率にすると約374%になる。5億円超の6頭のなかでは いちばん低い(エフフォーリアは約2,774%、ヴェラアズールは約3,435%、タスティエーラは約2,353%)。

つまり、大物そのものは預け先の順位で線を引けない。 どの区分からも出ているし、区分ごとの頭数の差も母数を考えれば説明がつく範囲だ。 むしろ差が出ているのは回収率のほうで、そちらは「安く募集された馬が大化けした」 圏外側に分がある。

募集時に30位以内だった厩舎側(18頭のうち賞金上位6頭)

馬名厩舎募集時の担当厩舎募集年誕生月体高胸囲馬体重母齢一口価格主な勝鞍通算成績獲得賞金合計回収率
タスティエーラ堀宣行(美浦)14位2021年3月158cm176cm478kg7歳7万円23'日本ダービー(G1)15戦4勝65,897万円2353%
サートゥルナーリア角居勝彦(栗東)3位2017年3月156cm179cm484kg15歳35万円19'皐月賞(G1)10戦6勝52,358万円374%
ヘデントール木村哲也(美浦)18位2022年4月154cm173.5cm444kg9歳9万円25'天皇賞(春)(G1)11戦6勝51,610万円1434%
シックスペンス田中博康(美浦)16位2022年4月151cm173cm429kg9歳12.5万円26'安田記念(G1)14戦6勝42,069万円841%
レイパパレ高野友和(栗東)18位2018年1月155cm169cm420kg15歳15万円21'大阪杯(G1)15戦6勝39,314万円655%
クリソベリル音無秀孝(栗東)6位2017年2月161.5cm179.5cm498kg15歳14万円19'チャンピオンズC(G1)11戦8勝37,960万円678%

募集時に30位圏外だった厩舎側(19頭のうち賞金上位6頭)

馬名厩舎募集時の担当厩舎募集年誕生月体高胸囲馬体重母齢一口価格主な勝鞍通算成績獲得賞金合計回収率
エフフォーリア鹿戸雄一(美浦)37位2019年3月158cm176.5cm489kg10歳7万円21'有馬記念(G1)11戦6勝77,663万円2774%
ヴェラアズール渡辺薫彦(栗東)74位2018年1月160cm181cm483kg11歳4万円22'ジャパンC(G1)27戦6勝54,968万円3435%
ナミュール高野友和(栗東)31位2020年3月157cm176cm424kg10歳6.5万円23'マイルCS(G1)18戦5勝50,963万円1960%
ドゥレッツァ尾関知人(美浦)112位2021年4月154.5cm174cm428kg12歳10万円23'菊花賞(G1)13戦5勝47,217万円1180%
レシステンシア松下武士(栗東)51位2018年3月153.5cm179cm482kg8歳6.5万円19'阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)18戦5勝44,952万円1729%
カテドラル池添学(栗東)42位2017年2月155.5cm175.5cm452kg13歳10万円21'京成杯オータムハンデキャップ(G3)37戦4勝22,223万円556%
残りの25頭も見る
馬名厩舎募集時の担当厩舎募集年誕生月体高胸囲馬体重母齢一口価格主な勝鞍通算成績獲得賞金合計回収率
シュヴァリエローズ清水久詞(栗東)24位2019年5月154cm166.5cm402kg17歳20万円24'京都大賞典(G2)38戦5勝29,266万円366%
ワールズエンド池添学(栗東)10位2022年2月152cm169.5cm426kg11歳17.5万円26'京王杯スプリングC(G2)11戦5勝19,900万円284%
マルシュロレーヌ矢作芳人(栗東)6位2017年2月156.5cm180.5cm458kg15歳7.5万円21'ブリーダーズCディスタフ(G1)22戦9勝19,327万円644%
スルーセブンシーズ尾関知人(美浦)47位2019年4月156cm177cm457kg13歳4.5万円23'中山牝馬S(G3)14戦4勝19,170万円1065%
グランディア中内田充(栗東)13位2020年3月156cm180cm426kg18歳14万円26'新潟大賞典(G3)27戦5勝17,996万円321%
パントルナイーフ木村哲也(美浦)17位2024年4月156.5cm170.5cm441kg12歳20万円25'東京スポーツ杯2歳S(G2)5戦2勝17,478万円218%
ザダル大竹正博(美浦)109位2017年2月155cm172.5cm454kg9歳4万円22'京都金杯(G3)16戦6勝16,996万円1062%
ラヴェル矢作芳人(栗東)2位2021年2月161cm183cm469kg11歳7.5万円24'チャレンジC(G3)17戦3勝16,594万円553%
コントラチェック蛯名正義(美浦)圏外2017年4月155cm175.5cm449kg17歳15万円21'オーシャンS(G3)19戦5勝15,089万円251%
キラーアビリティ斉藤崇史(栗東)15位2020年1月155cm174cm447kg11歳25万円21'ホープフルS(G1)18戦3勝14,431万円144%
ベレヌス杉山晴紀(栗東)74位2018年3月156cm174cm457kg9歳4万円22'トヨタ賞中京記念(G3)32戦6勝13,882万円868%
グルーヴィット松永幹夫(栗東)57位2017年4月151.5cm173cm444kg10歳9万円19'トヨタ賞中京記念(G3)25戦4勝12,919万円359%
シュトラウス武井亮(美浦)51位2022年1月160cm181.5cm522kg19歳12.5万円23'東京スポーツ杯2歳S(G2)15戦4勝10,337万円207%
モントライゼ松永幹夫(栗東)9位2019年4月152cm175cm462kg10歳7.5万円20'京王杯2歳S(G2)29戦3勝9,522万円317%
クラージュゲリエ池江泰寿(栗東)1位2017年2月156cm171cm460kg11歳12.5万円18'ラジオNIKKEI杯京都2歳S(G3)12戦2勝9,299万円186%
ロックターミガン石坂公一(栗東)71位2024年3月160.5cm180cm516kg11歳8万円京浜盃7戦3勝8,711万円272%
ファンダム辻哲英(美浦)95位2023年2月153cm174.5cm460kg7歳9万円25'毎日杯(G3)8戦3勝8,191万円228%
スキルヴィング木村哲也(美浦)32位2021年3月162cm182cm506kg10歳8.5万円23'青葉賞(G2)5戦3勝7,402万円218%
サンクテュエール田中博康(美浦)120位2018年2月151cm175cm443kg11歳20万円20'シンザン記念(G3)16戦2勝7,083万円89%
パッシングスルー黒岩陽一(美浦)163位2017年3月159cm176cm462kg11歳5万円19'紫苑S(G3)13戦3勝7,052万円353%
ギリーズボール手塚貴久(美浦)18位2024年5月156cm174.5cm423kg14歳12.5万円26'フィリーズレビュー(G2)4戦2勝6,078万円122%
カナルビーグル佐藤悠太(栗東)圏外2023年2月156cm175cm453kg11歳9万円25'ユニコーンS(G3)7戦3勝5,898万円164%
フィリアプーラ菊沢隆徳(美浦)59位2017年4月149.5cm175cm426kg16歳5万円19'フェアリーS(G3)16戦2勝5,697万円285%
サンダーストラック木村哲也(美浦)17位2024年2月158cm184cm490kg9歳20万円26'シンザン記念(G3)6戦2勝5,018万円63%
トータルクラリティ池添学(栗東)19位2023年1月155cm174cm436kg11歳7.5万円24'新潟2歳S(G3)10戦2勝3,858万円129%

上の2つの表と折りたたみを合わせた37頭が、594頭のうち重賞を勝った馬のすべて。一口価格は募集時のもの。

折りたたみまで開くと分かるが、同じ調教師が違う区分に出てくる。 リーディングの順位は毎年動くので、ここで見ているのは 「その馬を募集した年に、その厩舎がどのあたりにいたか」であって、 厩舎そのものに貼ったラベルではない。 募集の年に30位圏内にいた厩舎が翌年には落ちていることもあるし、その逆もある。 上の分類はそういうものとして見てほしい。

ちなみに体高の記事で見たとおり、一口価格そのものと成績の関係も ほとんど無い。値段でも預け先でも、そう簡単には決まらないということだと思う。

東西(美浦と栗東)は、言うほど差がない

ついでに、よく話題になる東西の別も見ておく。 こちらは所属地域なので年によって入れ替わることがなく、素直に比べられる。 対象594頭の内訳は美浦312頭・栗東282頭だ。

9年ぶんをまとめると、獲得賞金の中央値は美浦699万円・ 栗東930万円で、検定はp=0.0272。 数字だけ見ると栗東寄りに出る。 ただし優越確率は0.55だ。 これは「両方から1頭ずつ選んだとき栗東のほうが上回る確率」で、 差がなければ0.50になる。0.55はほぼ五分と読むのが 正直なところだと思う。

そして重賞馬率(5.4%対7.1%)と出走率には差がなく、直近5年(2021〜2025年募集)だけで見ると賞金の差も消える(p=0.4905)。 重賞馬率にいたっては、直近5年ではむしろ美浦のほうが高い (5.1%対2.9%)。 父の系統で切っても方向はばらついて、エピファネイア・モーリスといったロベルト系は美浦のほうが上、 それ以外の系統は栗東のほうが上、と揃わない。

父の系統美浦(頭数・賞金中央値)栗東(頭数・賞金中央値)
サンデー系117頭・600万円108頭・786万円
キングマンボ系85頭・440万円68頭・836万円
ロベルト系47頭・1,384万円48頭・1,210万円
その他63頭・588万円58頭・970万円

父の系統は主要3系統(サンデー系・キングマンボ系・ロベルト系)だけを分類し、 残りはすべて「その他」にまとめている。「その他」は中身が混ざった袋なので、 系統としての比較には使えない。

まとめると、古い募集ぶんではわずかに栗東寄りの数字が出るが、最近の募集では消えている。 少なくともキャロットの募集馬に関しては、 東西のどちらかというだけで出資先を選り分ける材料にはならなさそうだ。

ちなみに、数字の大きさだけで言えばこの東西の賞金差のほうが、 記事の前半で見たリーディングの差よりまだ出ている。 そのリーディングの差ですら「ほぼ五分」で片付く程度、ということでもある。

この記事で言えないこと

弱い結果ほど読み違えられやすいので、限界を書いておきたい。

1. 出走率が上位側で低い理由は、この集計からは分からない。3本の線すべてで向きが揃い、30位以内では検定も通っている(p=0.0015)ので、 偶然の揺れとしては片付けにくい。ただしなぜそうなるのかは別の話で、 厩舎ごとの預かり頭数の構成の違いかもしれないし、まったく別の要因かもしれない。 そこは検証していないので、原因については何も主張しない。

2. 単年のリーディング順位は、調教師のキャリア全体の評価ではない。リーディングはその年の勝利数だけで決まるので、順位は年ごとにかなり動く。 ある年に30位圏外だった厩舎が翌年には20位以内、ということも珍しくない。 この記事で見ているのは「募集した年に、たまたまどのあたりにいたか」という一点で、 その厩舎の実力を測ったものではない。

3. これはキャロットがどの厩舎に預けたか、という話であって、調教師個々の優劣ではない。分けているのは「募集年のリーディングで上位N位に入っていたか」だけで、 個別の厩舎について何かを言える集計ではない。実際、同じ調教師が募集年によって 両方の区分に出てくる。

4. 弱い結果なので、「上位厩舎は避けるべき」という逆方向の主張もできない。ここが一番大事だと思う。3本の線で切って重賞馬率が0.05を下回ったのは20位以内の1本だけで、 10位に寄せても30位に広げても消える。順位が本当に効いているなら上位に寄せるほど 差が大きくなるはずで、その形にはなっていない。 賞金の逆転にいたってはp=0.7533で、差の証拠としては何も残らない。「上位側が有利」も「上位側が不利」も、 このデータでは支持されないというのが正確な読み方で、 出走率の逆転だけは無視できない、というくらいの温度感になる。

5. 新しい募集年の馬は、まだ結果が出そろっていない。賞金は走った年数ぶん積み上がるので、募集年が古い馬ほど数字が大きく出る。2024・2025年募集の馬は、これから成績が動く。

まとめ

データについて

集計対象は2017〜2025年募集のうち現在JRAに所属している594頭。 募集後に地方へ移った馬は含んでいない。

「リーディング上位」の判定は、各馬の募集年のリーディング順位で行っている。 対象9年ぶんすべてに実際のリーディングの表があり、代用した年はない。

重賞と獲得賞金は2026年9月時点の集計で、現役馬はこの先変わっていく。 獲得賞金は中央(JRA)と地方(NAR)の合計で、海外レースの賞金は含まない。 賞金は走った年数ぶん積み上がるので、募集年が古い馬ほど有利に出る点にも注意がいる。 「重賞馬」は中央のG1〜G3・Jpn1〜3と地方重賞を1勝以上した馬の頭数で、重賞の勝ち数ではない。 募集総額は一口価格 × 口数で、回収率は獲得賞金合計 ÷ 募集総額。 会費・維持費や引退時の売却額は入っていないので、実際の配当ではなく規模感の目安として見てほしい。

p値は「差がまったくないとしたら、これくらいの偏りが偶然出る確率」の目安で、 小さいほど偶然では説明しづらいことを意味する。詳しくは分析記事の読み方にまとめてある。 統計の数字はあくまで傾向の目安で、これだけで「この厩舎なら走る/走らない」と 言えるものではない。出資判断の材料というより、趣味の分析として楽しんでもらえたら。

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