1.5次募集に回った馬にも、当たりはいるのか?

1次募集の抽選が終わった。最優先も一般も外れて、手元に何も残らなかった人がいる。 私もそうだ。そして今年も、満口にならなかった馬が23頭、1.5次募集に回った。

このリストを見て「1次で売れ残った馬か」と思うのは自然だ。実際、みんなが欲しがった馬から 順に埋まっていくのだから、残っているのは人気がなかった馬である。それは間違いない。

ただ、人気がなかったことと、走らないことは別の話だ。 過去4年ぶんの「1.5次募集に回った馬」を全頭洗い出して、その後どうなったかを追いかけた。

結論から書く。成績が出そろっている3世代は、どの年も同期の獲得賞金トップ10に 1.5次組が1頭ずつ入っている。オープンを勝った馬もいるし、募集価格より多く稼いだ馬も5頭いる。

この記事で見ている馬

キャロットの1歳馬募集は、1次募集で満口にならなかった馬だけが1.5次募集に回る。 クラブが毎年9月に出す「第1次募集最終集計結果」に、その年どの馬が1.5次募集の対象になったかが 載っている。この記事はそれをそのまま使っている。

募集年度募集頭数1.5次募集に回った馬
2022年度94頭11頭
2023年度96頭13頭
2024年度96頭19頭
2025年度93頭23頭
2026年度(今年)92頭23頭

このうち2025年度産(今の2歳)はまだデビューが始まったばかりなので、成績の話は2022〜2024年度の43頭でする。

なぜ2022年度からなのか

さかのぼれるだけさかのぼって、そこで止まったわけではない。それより前は同じ土俵に並べられないからだ。

2021年度は、そもそも1.5次募集が無かった。1次募集で全馬が満口になり、 クラブの発表にも「第1次募集において全馬満口となりましたため、1.5次ならびに 第2次募集の実施はございません」とある。該当する馬が0頭なので、比べようがない。

2020年度以前は、募集の枠組みそのものが違う。当時は新規入会者も 1次募集に参加していて、最終結果にも「新規入会者内での抽選」という別枠がある。 1.5次募集の案内も「既存会員、新規入会者を問わず」の優先受付だった。 いまの「1次で最優先を外した既存会員だけが、1人1頭まで」とは条件が別物で、 「1次で満口にならなかった」という言葉の意味が揃わない。

参考までに、2020年度に1.5次募集へ回ったのは4頭で、この4頭からは目立った成績は出ていない。 ただし枠組みが上記のとおり違うので、本文の集計には入れていない。 2019年度以前は、クラブのサイトに該当する発表が残っていないため確認できなかった。

同期3位まで来た馬がいる

いちばんはっきりしているのがこれだ。1.5次募集に回った馬を、同じ年に募集された馬全部と 獲得賞金で並べたときの順位。

募集年度馬名同期順位戦績獲得賞金主な勝鞍
2023年度コーチェラバレー3位 / 96頭11戦4勝6,626万円26'丹頂S(OP)
2022年度ミルテンベルク8位 / 94頭16戦2勝6,605万円24'九州スポーツ杯(2勝クラス)
2024年度バルセシート8位 / 96頭8戦2勝3,685万円26'3歳以上1勝クラス

3年とも、11頭・13頭・19頭しかいない少ない母数の中から、90頭を超える同期の上位10位に届く馬が出ている。

コーチェラバレー(キズナ×キャンプロック)は、1次募集で満口にならず1.5次募集に回った馬だ。 それが4歳の今年9月、札幌のオープン特別・丹頂ステークスを勝った。 募集価格6,000万円に対して獲得賞金は6,626万円。1次募集で人気が集まらなかった馬が、 その年の募集馬96頭の中で3番目に稼いでいる。

ミルテンベルク(モーリス×ペルレンケッテ)は一口10万円・総額4,000万円。 16戦して2勝だが、そのうち1つが2勝クラスの九州スポーツ杯で、獲得賞金は6,605万円まで伸びた。募集価格の165%。この記事で追った馬の中で、回収率はいちばん高い。

バルセシート(キズナ×マラコスタムブラダ)は少し毛色が違う。 一口25万円・総額1億円の高額馬で、しかもレシステンシアの半弟。 それでも1次募集では満口にならず、1.5次募集に回った。3歳の今年、1勝クラスを勝って3,685万円。 高い馬・血統のいい馬が余らないわけではない、という例だ。

「1頭だけたまたま」ではない

トップ10級はたしかに1頭ずつだが、その下も空っぽではない。 同期の獲得賞金の中央値を上回った馬の数はこうなる。

2024年度は半分以上が同期の真ん中より上にいる。

3世代43頭を合計すると、39頭がデビューにたどり着き、24頭が勝ち上がった。 2勝以上が14頭、3勝以上が5頭。 そして募集価格を上回る賞金を稼いだ馬が5頭いる。

馬名募集年度所属募集価格獲得賞金回収率
ミルテンベルク2022年度中央4,000万円6,605万円165%
ジョイフルロック2023年度地方1,800万円2,483万円138%
マイスターヴェルク2023年度中央2,400万円3,016万円126%
コーチェラバレー2023年度中央6,000万円6,626万円110%
ヴェルトラウム2022年度中央2,000万円2,125万円106%

ヴェルトラウム(ミッキーロケット×ヒルダ)は一口5万円。体高145.5cmと小柄で、 15戦して2勝と派手さはない。それでも2,125万円を稼いで、募集価格を超えた。 安い馬が地道に走ると、こういう形で戻ってくる。

正直に書いておくこと

いいことばかり書いたので、そうでない部分も出しておく。

43頭から重賞を勝った馬は1頭も出ていない。 2022〜2024年度の3世代で0頭だ。 同じ3世代の募集馬286頭からは11頭の重賞勝ち馬が出ている (安田記念のシックスペンス、天皇賞・春のヘデントールなど)。ここははっきり差がある。 1.5次募集で「G1に手が届く馬」を探すのは、確率的にはかなり厳しい。

勝ち上がり率も、1次で満口になった馬より低い。同じ3世代で比べると1.5次組が55.8%(24/43頭)、1次で満口になった組が64.6%(157/243頭)。8.8ポイントの差だ。ただ、差そのものは統計的にはっきり出るほど大きくはない (p=0.2701)。母数が少ないので、この差を細かく読み込みすぎないほうがいい。

一方で、募集価格以上に稼いだ馬の割合で比べると、差はほとんど無くなる。 1.5次組が11.6%(5/43頭)、 1次で満口になった組が12.0%(29/242頭)。 勝ち上がる割合は少し低くても、出資した額以上に稼ぐ「当たり」を引く割合は、1次で人気を集めた馬たちとほぼ同じだった。

言い方を変えると、1.5次募集に回った馬でも半分以上は勝ち上がっている。 デビューまでたどり着けなかった馬、1戦で終わった馬もいて、43頭のうち 勝ち上がれなかったのは19頭。この現実は変わらない。

つまり、こういうことになる。上のほう(重賞)は薄い。でも「勝ち上がって、そこそこ稼ぐ」層の厚みは、そこまで変わらない。1.5次募集に期待するなら、この現実的な線を見たほうがいい。

今年の23頭

今年1.5次募集に回ったのは23頭。1次募集で最優先が抽選に外れた人だけが 参加できる優先受付で、出資できるのは1人1頭まで、という枠だった。

その受付が終わり、クラブから第2次募集の対象馬が発表された。23頭のうち8頭が1.5次募集で満口になり、 残る15頭が第2次募集に回っている。1回の優先受付で3分の1が埋まった計算になる。

埋まり方にも順番があった。1.5次募集の時点で残り口数の実数が出ていた ——つまり残口が100口(地方入厩予定馬は25口)以下だった8頭のうち、7頭が満口になっている。あと少しで埋まる馬から先に決まっていく、 というのは感覚どおりだ。逆に言えば、今残っているのはまだ口数に余裕がある馬が中心で、 焦って決めなくてもいい状況ではある。

今から出資できる15頭は一覧の「残口あり」ビューにまとまっている。 馬名からはこのサイトの個別ページに飛べるので、気になった馬の血統・測尺を見てほしい。 1.5次募集で満口になった馬には「1.5次完売」と表示しているので、 全頭ビューに切り替えればどれが売れたのかも追える。

この15頭を過去データの物差しで見比べた記事も書いた。第2次募集の15頭を、過去のデータで見比べる

過去4年を追いかけて言えるのは、この23頭の中にも、 数年後に「あのとき申し込んでおけば」と言われる馬がおそらく混ざっている、ということだ。 1次で外れた人が、ここで拾える。

データについて

1.5次募集の対象馬はキャロットクラブが公表した各年度の「第1次募集最終集計結果」による。 競走成績は2026年9月時点のスナップショット。獲得賞金は中央・地方の合計。 回収率=獲得賞金 ÷ 募集総額(一口価格×口数)。

募集馬一覧へ戻る / 分析記事一覧へ