キャロの募集馬は、いつ北海道を出るのか

出資馬の近況で、私がいちばん嬉しい一文は「NF天栄へ移動しました」かもしれない。 北海道の育成牧場を出て本州に来るというのは、入厩が近いという意味だからだ。 逆に、同じ年の馬が次々に本州へ移っていくのに自分の馬の近況だけずっと北海道のまま、という時期は、 何となく落ち着かない。

では実際のところ、キャロットの募集馬はふつう何月ごろに北海道を出るのか。遅い馬は、 やっぱり走らないのか。2017〜2022年募集の501頭の近況を数えて、2026年9月時点の成績と突き合わせてみた。

いつ北海道を出るのか

1歳8月の測尺から数えて、本州(NF天栄・NFしがらき、またはトレセン)に着くまでの日数を 月に直して並べるとこうなる。牡と牝で山の形がかなり違う。

牡が北海道を出た月(2歳時・239頭)

4頭2月34頭3月45頭4月44頭5月33頭6月18頭7月19頭8月18頭9月5頭10月4頭11月2頭12月13頭3歳〜

牡が北海道を出た月(2歳時・239頭): 2月 頭数 4頭、 3月 頭数 34頭、 4月 頭数 45頭、 5月 頭数 44頭、 6月 頭数 33頭、 7月 頭数 18頭、 8月 頭数 19頭、 9月 頭数 18頭、 10月 頭数 5頭、 11月 頭数 4頭、 12月 頭数 2頭、 3歳〜 頭数 13頭

牝が北海道を出た月(2歳時・262頭)

1頭2月23頭3月32頭4月44頭5月35頭6月23頭7月40頭8月34頭9月14頭10月4頭11月2頭12月10頭3歳〜

牝が北海道を出た月(2歳時・262頭): 2月 頭数 1頭、 3月 頭数 23頭、 4月 頭数 32頭、 5月 頭数 44頭、 6月 頭数 35頭、 7月 頭数 23頭、 8月 頭数 40頭、 9月 頭数 34頭、 10月 頭数 14頭、 11月 頭数 4頭、 12月 頭数 2頭、 3歳〜 頭数 10頭

牡は2歳の3〜6月にまとまっていて、中央値は2歳5月下旬(測尺から約9.2か月)。 春のうちに半分以上が出ていく。

牝は5月に最初の山があって、中央値は2歳6月下旬(約10.3か月)と牡より1か月ほど遅い。 そして8〜9月にもう一つ山がある。夏まで北海道で過ごしてから出ていく牝馬がまとまっているのは、 牡には無い形だった。近況で夏まで「まだ北海道」が続く牝馬は、頻度で言えば珍しくない。 ただ、あとで見るように、その後の成績には差が出ている。

募集年ごとの中央値(牡牝あわせて)は286〜320日で、 年によって34日ほど動く。牡と牝の差(35日)と同じくらいの幅なので、 「今年はみんな遅い」ということもありうる。

天栄・しがらきを経て、すぐトレセンへ

北海道を出た馬の93%(468頭)は、 まずNF天栄かNFしがらきに入る。ただ、そこに長くいる馬は少なく、 トレセンに入るまでの日数の中央値は3日。461頭のうち64%(295頭)が1週間以内にトレセンへ移っていて、 2週間を超えて留まったのは26%(118頭)だった。

北海道からの長い輸送のあと、天栄・しがらきで数日休ませてからトレセンに入る、という流れが多い。 だから「北海道を出る」は、たいていそのまま入厩に向けた移動になっている。 はじめから天栄・しがらきを通らずにトレセンへ入った馬も33頭いた。 近況で本州への移動を見たら、ゲート試験やデビューに向けた段階に入ったと思ってよさそうだ。

早く出た馬は、その後どうだったか

まずは1頭ずつ点で見てみる。横が北海道を出た時期、縦がその後の獲得賞金。

北海道を出た時期 × 獲得賞金合計(480頭)

  • 牡
  • 牝
00.5億1億1.5億2億2歳3月6月9月12月3歳3月獲得賞金合計(万円)北海道を出た時期

獲得賞金が2億円を超える15頭はグラフの上に出るので省いた(重賞馬の一覧に全員入っている)。測尺から600日(3歳4月上旬)より遅く出た6頭も右端の外なので省いている。点にカーソルを合わせる(スマホはタップ)と馬名が出る。

左の方ほど縦に伸びる点が多く、右へ行くほど下の方に固まっていく。 ただ、左側にも賞金がほとんど無い点はたくさんあるし、右側にもぽつぽつ高い点がある。 北海道を出た早さと賞金の順位相関は 牡-0.19(p=0.0024)・ 牝-0.26(p<0.0001)。 向きははっきりしているけれど、1頭ごとの成績を言い当てられるほど強くはない、という程度だ。

これを3つの群に分けてまとめたのが次のグラフ。牡・牝それぞれを北海道を出た早い順に並べて3等分し、その後の成績を比べた。 棒は獲得賞金の中央値で、下に勝ち上がり率と重賞馬の頭数を添えている。

北海道を出た早さ別・獲得賞金の中央値(牡)

1,915万円早い勝ち上がり86.3%・重賞馬10頭2,581万円中くらい勝ち上がり84.8%・重賞馬10頭1,093万円遅い勝ち上がり66.3%・重賞馬5頭

北海道を出た早さ別・獲得賞金の中央値(牡): 早い 獲得賞金の中央値 1,915万円(頭数80頭)(勝ち上がり86.3%・重賞馬10頭)、 中くらい 獲得賞金の中央値 2,581万円(頭数79頭)(勝ち上がり84.8%・重賞馬10頭)、 遅い 獲得賞金の中央値 1,093万円(頭数80頭)(勝ち上がり66.3%・重賞馬5頭)

牡の3群の区切り(測尺からの日数): 早い=257日まで(〜2歳4月ごろ)、 中くらい=258〜316日、遅い=319日以降(2歳6月ごろ〜)。

北海道を出た早さ別・獲得賞金の中央値(牝)

1,250万円早い勝ち上がり76.4%・重賞馬7頭780万円中くらい勝ち上がり65.9%・重賞馬3頭426万円遅い勝ち上がり53.4%・重賞馬2頭

北海道を出た早さ別・獲得賞金の中央値(牝): 早い 獲得賞金の中央値 1,250万円(頭数89頭)(勝ち上がり76.4%・重賞馬7頭)、 中くらい 獲得賞金の中央値 780万円(頭数85頭)(勝ち上がり65.9%・重賞馬3頭)、 遅い 獲得賞金の中央値 426万円(頭数88頭)(勝ち上がり53.4%・重賞馬2頭)

牝の3群の区切り(測尺からの日数): 早い=280日まで(〜2歳5月ごろ)、 中くらい=281〜363日、遅い=364日以降(2歳8月ごろ〜)。

牝はきれいな階段になった。勝ち上がり率は早い群76.4%、 中くらい65.9%、遅い群53.4%。 賞金の中央値も1,250万円から426万円まで下がっていく。 さきほどの8〜9月の山は、ほぼまるごとこの遅い群に入る。

牡は形が少し違って、早い群(86.3%)と中くらい(84.8%)は ほとんど差がなく、遅い群だけが66.3%と下がる。 牡の場合、春に出るか初夏に出るかはあまり関係なく、6月いっぱいで北海道を出られたかどうかが分かれ目になっている。

早い群と遅い群の勝ち上がり率の差は、牡(p=0.0030)・牝(p=0.0013)とも 偶然では説明しにくい大きさだった(p値)。

体が大きい馬ほど早く出ているだけでは?

これは気になったので確かめた。募集時の馬体重と北海道を出た早さの順位相関は 牡-0.26(p<0.0001)・ 牝-0.31(p<0.0001)で、 たしかに重い馬ほど早く出る傾向がある。 そこで馬体重の近い馬どうしで比べ直した。性別ごとに馬体重で3等分し、それぞれの中で北海道を出た早い半分と 遅い半分の勝ち上がり率を並べたのが下の表。

性募集時の馬体重早く出た半分遅く出た半分
牡軽め(357〜439kg)95.0%61.0%
牡中くらい(440〜463kg)85.4%78.0%
牡重め(464〜586kg)84.2%71.1%
牝軽め(370〜422kg)69.8%38.6%
牝中くらい(423〜452kg)79.1%59.1%
牝重め(453〜536kg)79.5%65.9%

6つの組すべてで、早く出た半分のほうが勝ち上がっていた。体の大きさだけでは説明しきれない差が残る。

早生まれだから早く出ているだけでは?

早く生まれた馬ほど早く育って早く出る、なら「早生まれが走る」話の言い換えになってしまう。 ところが誕生月と北海道を出た早さの順位相関は牡0.05・ 牝0.10で、ほとんど関係がなかった。 誕生月と勝ち上がりの関係も牡0.07・牝0.01とほぼゼロ (誕生月の記事でも成績との関係は弱かった)。 念のため誕生月で3つに分けて、同じように早く出た半分と遅く出た半分を比べた。

性誕生月早く出た半分遅く出た半分
牡1〜2月生まれ(102頭)84.3%60.8%
牡3月生まれ(63頭)90.3%81.3%
牡4月以降生まれ(74頭)94.6%70.3%
牝1〜2月生まれ(106頭)67.9%60.4%
牝3月生まれ(64頭)84.4%50.0%
牝4月以降生まれ(92頭)76.1%54.3%

こちらも6つの組すべてで早く出た半分が上。北海道を出る時期は、生まれ月とは別に、 その馬の育ち具合を見て決まっているように見える。

これは「早く出せば走る」ではない

ここは読み違えたくないところで、北海道を出る日付は馬の能力を作るものではない。 牧場や厩舎が「この馬は態勢が整った」と判断した結果が、移動日という形で外から見えている、と考えるのが自然だと思う。 毎日その馬に乗っている人たちの評価が日付に出ているのなら、 早い群がよく走っているのは不思議でも何でもない。

逆に北海道に残るのは、成長を待っているのか、どこかに不安があるのか。近況の本文を読まないと分からない。 近況に本州へ来た記録が見当たらない馬も、2017〜2022年募集で26頭 (うち9頭は募集中止)いた。一方で、時間をかけたからこそ大成した馬もいる。次の節がそれだ。

遅く出ても、重賞を勝った馬はいる

501頭のうち重賞を勝ったのは37頭。3群に分けると早い群17頭・ 中くらい13頭・遅い群7頭で、やはり早い側に多い。 それでも遅い群からの7頭は、顔ぶれがすごい。

重賞馬全員の一覧は下に畳んである(北海道を出た早い順。「北海道を出た時期」の列のパーセントは、 同じ性の馬の中で早い方から何%の位置か)。

重賞を勝った37頭をすべて見る
馬名北海道を出た時期募集年誕生月体高胸囲馬体重母齢一口価格主な勝鞍通算成績獲得賞金合計
キラーアビリティ2歳3月(牡の早い方から2%)2020年1月155cm174cm447kg11歳25万円21'ホープフルS(G1)18戦3勝14,431万円
パラレルヴィジョン2歳3月(牡の早い方から3%)2020年2月156cm175cm447kg8歳12.5万円24'ダービー卿チャレンジT(G3)23戦6勝13,898万円
シュトラウス2歳3月(牡の早い方から3%)2022年1月160cm181.5cm522kg19歳12.5万円23'東京スポーツ杯2歳S(G2)15戦4勝10,337万円
グランディア2歳3月(牡の早い方から4%)2020年3月156cm180cm426kg18歳14万円26'新潟大賞典(G3)27戦5勝17,996万円
フェブランシェ2歳3月(牝の早い方から4%)2021年1月160.5cm183cm518kg15歳6万円25'スパーキングレディーC((G3)18戦6勝11,312万円
コントラチェック2歳3月(牝の早い方から4%)2017年4月155cm175.5cm449kg17歳15万円21'オーシャンS(G3)19戦5勝15,089万円
モントライゼ2歳4月(牡の早い方から16%)2019年4月152cm175cm462kg10歳7.5万円20'京王杯2歳S(G2)29戦3勝9,522万円
サートゥルナーリア2歳4月(牡の早い方から20%)2017年3月156cm179cm484kg15歳35万円19'皐月賞(G1)10戦6勝52,358万円
カテドラル2歳4月(牡の早い方から24%)2017年2月155.5cm175.5cm452kg13歳10万円21'京成杯オータムハンデキャップ(G3)37戦4勝22,223万円
ヘデントール2歳4月(牡の早い方から30%)2022年4月154cm173.5cm444kg9歳9万円25'天皇賞(春)(G1)11戦6勝51,610万円
ナミュール2歳4月(牝の早い方から19%)2020年3月157cm176cm424kg10歳6.5万円23'マイルCS(G1)18戦5勝50,963万円
ラヴェル2歳4月(牝の早い方から19%)2021年2月161cm183cm469kg11歳7.5万円24'チャレンジC(G3)17戦3勝16,594万円
クリソベリル2歳4月(牡の早い方から31%)2017年2月161.5cm179.5cm498kg15歳14万円19'チャンピオンズC(G1)11戦8勝37,960万円
ノーヴァレンダ2歳4月(牡の早い方から32%)2017年2月159cm185cm512kg14歳7万円18'全日本2歳優駿【国際交流】(G1)18戦6勝11,954万円
クラージュゲリエ2歳5月(牡の早い方から36%)2017年2月156cm171cm460kg11歳12.5万円18'ラジオNIKKEI杯京都2歳S(G3)12戦2勝9,299万円
ベレヌス2歳5月(牡の早い方から37%)2018年3月156cm174cm457kg9歳4万円22'トヨタ賞中京記念(G3)32戦6勝13,882万円
シュヴァリエローズ2歳5月(牡の早い方から37%)2019年5月154cm166.5cm402kg17歳20万円24'京都大賞典(G2)38戦5勝29,266万円
ザダル2歳5月(牡の早い方から39%)2017年2月155cm172.5cm454kg9歳4万円22'京都金杯(G3)16戦6勝16,996万円
サンクテュエール2歳5月(牝の早い方から28%)2018年2月151cm175cm443kg11歳20万円20'シンザン記念(G3)16戦2勝7,083万円
パッシングスルー2歳5月(牝の早い方から29%)2017年3月159cm176cm462kg11歳5万円19'紫苑S(G3)13戦3勝7,052万円
ライトウォーリア2歳5月(牡の早い方から44%)2018年2月157cm175cm458kg8歳5万円24'川崎記念(G1)40戦10勝31,809万円
エフフォーリア2歳5月(牡の早い方から44%)2019年3月158cm176.5cm489kg10歳7万円21'有馬記念(G1)11戦6勝77,663万円
バーデンヴァイラー2歳5月(牡の早い方から45%)2019年3月156cm173cm448kg17歳12.5万円23'佐賀記念(G3)20戦7勝15,280万円
ドゥレッツァ2歳5月(牡の早い方から46%)2021年4月154.5cm174cm428kg12歳10万円23'菊花賞(G1)13戦5勝47,217万円
スルーセブンシーズ2歳5月(牝の早い方から32%)2019年4月156cm177cm457kg13歳4.5万円23'中山牝馬S(G3)14戦4勝19,170万円
スキルヴィング2歳6月(牡の早い方から58%)2021年3月162cm182cm506kg10歳8.5万円23'青葉賞(G2)5戦3勝7,402万円
シックスペンス2歳6月(牡の早い方から59%)2022年4月151cm173cm429kg9歳12.5万円26'安田記念(G1)14戦6勝42,069万円
レシステンシア2歳6月(牝の早い方から48%)2018年3月153.5cm179cm482kg8歳6.5万円19'阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)18戦5勝44,952万円
グルーヴィット2歳6月(牡の早い方から67%)2017年4月151.5cm173cm444kg10歳9万円19'トヨタ賞中京記念(G3)25戦4勝12,919万円
ダイアナブライト2歳7月(牝の早い方から55%)2017年1月154cm176cm453kg8歳14万円21'クイーン賞(G3)18戦5勝7,780万円
フィリアプーラ2歳8月(牝の早い方から65%)2017年4月149.5cm175cm426kg16歳5万円19'フェアリーS(G3)16戦2勝5,697万円
ワールズエンド2歳9月(牡の早い方から88%)2022年2月152cm169.5cm426kg11歳17.5万円26'京王杯スプリングC(G2)11戦5勝19,900万円
マルシュロレーヌ2歳9月(牝の早い方から86%)2017年2月156.5cm180.5cm458kg15歳7.5万円21'ブリーダーズCディスタフ(G1)22戦9勝19,327万円
タスティエーラ2歳9月(牡の早い方から89%)2021年3月158cm176cm478kg7歳7万円23'日本ダービー(G1)15戦4勝65,897万円
レイパパレ2歳10月(牝の早い方から93%)2018年1月155cm169cm420kg15歳15万円21'大阪杯(G1)15戦6勝39,314万円
セラフィックコール2歳11月(牡の早い方から92%)2021年2月158cm180cm485kg8歳7.5万円24'ダイオライト記念(G2)18戦7勝21,553万円
ヴェラアズール3歳2月(牡の早い方から97%)2018年1月160cm181cm483kg11歳4万円22'ジャパンC(G1)27戦6勝54,968万円

ダービー馬もジャパンカップの勝ち馬も、夏を越して北海道を出た側にいる。確率で見れば遅い群は分が悪いけれど、 近況で「まだ北海道」が続いても、それだけで見限る理由にはならない。

まとめ

データについて

北海道を出た日は、クラブの近況に付いている日付と所在地から数えた。本州の育成場(NF天栄・NFしがらき)に 着いた日とトレセンに初めて入った日の早い方を「本州に来た日」としている。 月に直すときは測尺日を1歳の8月中旬として計算しているので、月の変わり目近くの馬は実際と1か月ずれることがある。 成績は2026年9月時点で、勝ち上がりは中央・地方で1勝以上、獲得賞金は中央と地方の合計。 成績がほぼ出そろった世代だけを使っているので、今の2〜3歳は含めていない。

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