デビューまでにたくさん増えた馬は、走るのか

出資馬の近況で馬体重が出ると、つい前回と見比べてしまう。私のスイートリディアも5月の444kgから8月には465kgまで増えて、それだけで少し嬉しくなった。 負荷を上げながら体が大きくなっているなら、順調ということだろう、と。

でも、たくさん増えてデビューした馬は本当によく走るのか。2017〜2022年募集でデビューした492頭について、 1歳8月の測尺の馬体重とデビュー戦の馬体重を比べ、2026年9月時点の成績と突き合わせた。

増え方の大小からは、その後の成績はほぼ読めなかった。

デビューまでに増える量

測尺からデビュー戦までの増え方を10kg刻みで並べた。牡は中央値で+31kg、 牝は+12kgと、牡のほうがずっと増える。

測尺からデビューまでの増え方(牡232頭・10kg刻み)

0頭-600頭0頭-400頭3頭-205頭19頭041頭36頭2051頭33頭4020頭11頭608頭4頭800頭1頭100

測尺からデビューまでの増え方(牡232頭・10kg刻み): -60 頭数 0頭、 -50 頭数 0頭、 -40 頭数 0頭、 -30 頭数 0頭、 -20 頭数 3頭、 -10 頭数 5頭、 0 頭数 19頭、 10 頭数 41頭、 20 頭数 36頭、 30 頭数 51頭、 40 頭数 33頭、 50 頭数 20頭、 60 頭数 11頭、 70 頭数 8頭、 80 頭数 4頭、 90 頭数 0頭、 100 頭数 1頭

測尺からデビューまでの増え方(牝260頭・10kg刻み)

1頭-601頭4頭-407頭26頭-2033頭47頭048頭51頭2022頭8頭407頭3頭601頭1頭800頭0頭100

測尺からデビューまでの増え方(牝260頭・10kg刻み): -60 頭数 1頭、 -50 頭数 1頭、 -40 頭数 4頭、 -30 頭数 7頭、 -20 頭数 26頭、 -10 頭数 33頭、 0 頭数 47頭、 10 頭数 48頭、 20 頭数 51頭、 30 頭数 22頭、 40 頭数 8頭、 50 頭数 7頭、 60 頭数 3頭、 70 頭数 1頭、 80 頭数 1頭、 90 頭数 0頭、 100 頭数 0頭

横軸は増え方(kg)。「0」の棒は0〜9kg増えた馬、「-10」は10kg減〜1kg減の馬。

意外だったのは、牝の28%(72頭)が測尺のときより軽くなってデビューしていること。 牡でも8頭が減っていた。

測尺は放牧地で草を食べている時期の体で、デビュー戦は絞ってレースに出る体だ。同じ「馬体重」でも中身が違うのかもしれない。

たくさん増えた馬の成績

まずは1頭ずつ見る。横が増え方、縦がその後の獲得賞金。

増え方 × 獲得賞金合計(477頭)

  • 牡
  • 牝
00.5億1億1.5億2億-50-250+25+50+75+100獲得賞金合計(万円)測尺からデビューまでの増え方(kg)

獲得賞金が2億円を超える15頭はグラフの上に出るので省いた(重賞馬の一覧に全員入っている)。 点にカーソルを合わせる(スマホはタップ)と馬名が出る。

見ての通り、形らしい形が無い。向きはむしろ増えた馬ほどわずかに賞金が少ない側に出ている (順位相関は牡-0.13・p=0.0463、牝-0.11・p=0.0701)。

性別ごとに増え方で3等分して比べると、こうなる。

増え方別・獲得賞金の中央値(牡)

2,370万円少ない(-19〜+22kg)勝ち上がり82.3%・重賞馬10頭2,524万円中くらい(+23〜+39kg)勝ち上がり85.5%・重賞馬8頭1,010万円多い(+40〜+107kg)勝ち上がり76.6%・重賞馬7頭

増え方別・獲得賞金の中央値(牡): 少ない(-19〜+22kg) 獲得賞金の中央値 2,370万円(頭数79頭)(勝ち上がり82.3%・重賞馬10頭)、 中くらい(+23〜+39kg) 獲得賞金の中央値 2,524万円(頭数76頭)(勝ち上がり85.5%・重賞馬8頭)、 多い(+40〜+107kg) 獲得賞金の中央値 1,010万円(頭数77頭)(勝ち上がり76.6%・重賞馬7頭)

増え方別・獲得賞金の中央値(牝)

959万円少ない(-55〜+3kg)勝ち上がり71.3%・重賞馬8頭813万円中くらい(+4〜+20kg)勝ち上がり69.8%・重賞馬4頭720万円多い(+21〜+80kg)勝ち上がり60.9%・重賞馬0頭

増え方別・獲得賞金の中央値(牝): 少ない(-55〜+3kg) 獲得賞金の中央値 959万円(頭数87頭)(勝ち上がり71.3%・重賞馬8頭)、 中くらい(+4〜+20kg) 獲得賞金の中央値 813万円(頭数86頭)(勝ち上がり69.8%・重賞馬4頭)、 多い(+21〜+80kg) 獲得賞金の中央値 720万円(頭数87頭)(勝ち上がり60.9%・重賞馬0頭)

牡も牝も、増え方が「多い」群がいちばん低い。勝ち上がり率は少ない群から多い群へ、 牡で82.3%→76.6%、 牝で71.3%→60.9%と下がる。 ただこの差は牡牝とも偶然でも起こりうる大きさだった (牡p=0.3818・牝p=0.1495)。

多い群が低く見える理由

増え方の多い群には、デビューが遅かった馬が多く混ざっている。次の2つが重なるためだ。

そこで、デビューまでの日数が近い馬どうしで、増え方の多い半分と少ない半分を比べた。

性測尺からデビューまで組全体増え方が少ない半分多い半分賞金中央値(少ない/多い)
牡早いデビュー(268〜375日)90.9%92.1%89.7%5,275/1,800万円
牡中くらい(377〜460日)85.7%81.6%89.7%2,764/3,559万円
牡遅いデビュー(462〜764日)67.9%71.8%64.1%616/688万円
牝早いデビュー(262〜404日)85.1%88.4%81.8%1,422/1,365万円
牝中くらい(405〜485日)65.1%58.1%72.1%710/925万円
牝遅いデビュー(488〜785日)51.7%55.8%47.7%378/339万円

「組全体」「少ない半分」「多い半分」の列は勝ち上がり率。

6つの組のうち、増え方の多い半分のほうが勝ち上がっていたのは2組、賞金の中央値で上だったのは3組。 組によって向きが入れ替わり、はっきりした傾向は無い。

一方で「組全体」の列を縦に見ると、早くデビューした組ほど勝ち上がり率が高い。 増え方よりも、デビューの時期のほうが成績と結びついていた。

ただし「早くデビューさせれば走る」という話ではない。デビューが遅れるのは、成長を待ったり、どこかに不安があったりした結果で、 時期そのものが原因とは言えない。遅くデビューした馬は走る回数も少ないので、勝ち上がり率や賞金の差には、この機会の少なさも入っている。

細かい数字を見る(相関・1日あたりの増え方・出走数)

増え方と日数の順位相関は牡0.35・牝0.18、 日数と賞金は牡-0.30・牝-0.35。

日数の影響を外すために増え方を1日あたりに直すと、賞金との相関は牡-0.03・牝-0.07までほぼ消える。 3等分した勝ち上がり率も牡80.5%・81.8%・82.1%、 牝69.8%・65.5%・66.7%(少ない→多い)と、ほぼ横並びになった。 賞金の中央値は牡で2,409・2,125・1,263万円とまだ下がって見えるが、 中央値は稼いだ数頭の入れ替わりで動きやすい。

日数で分けた組の平均出走数は、牡21.0・20.3・17.8戦、 牝19.1・17.2・11.0戦(早い→遅い)。

増え方を決めているもの

たくさん増えるのは、測尺のときに小さかった馬と、遅く生まれた馬だった。

増え方との順位相関は、測尺時の馬体重が牡-0.33・牝-0.44、 誕生月が牡0.43・牝0.47。 測尺とデビューの体重どうしは牡0.72・牝0.71。 誕生月と体重は、測尺時の牡-0.40・牝-0.44から、 デビュー時には牡-0.09・牝-0.11まで弱まる。

どちらも、その馬がどれだけ走るかとは別の話だ。近況で体重が大きく増えていても、それだけで期待を上乗せするのは難しそうだ。

牝はデビュー時の体重で差が出る

増え方ではなく、デビュー戦の馬体重そのもので3等分すると、牝でだけ差が出た。

性デビュー時の馬体重勝ち上がり率賞金中央値
牡軽め(396〜470kg)82.5%2,078万円
牡中くらい(472〜496kg)81.3%2,520万円
牡重め(497〜560kg)80.5%1,286万円
牝軽め(364〜434kg)62.5%655万円
牝中くらい(436〜460kg)67.4%761万円
牝重め(462〜534kg)72.1%1,332万円

牝は重い群ほど勝ち上がり率が高い(賞金との順位相関0.19・p=0.0024)。 牡はほぼ横並びだった(-0.06)。

測尺の馬体重の記事で見た、牝でだけ馬体重が成績と結びつくという形が、デビューの時点でも続いている。 牝馬の近況を見るなら、増えた量よりも、何kgでデビューを迎えそうかのほうが材料になる。

重賞馬の増え方

重賞を勝った37頭の増え方は-31kgから+55kgまでで、本当にばらばらだ。

安田記念馬は大きく増えてデビューし、ダービー馬と皐月賞馬はほとんど増えずにデビューしている。

目についたのは牝のほうだ。増え方が「多い」群からは重賞馬が出ておらず(少ない群は8頭)、 重賞を勝った牝馬の多くは、測尺から+10kg以内か、むしろ軽くなってデビューしていた。 ただ牝の重賞馬は全部で十数頭しかいないので、偶然の偏りの可能性も十分ある。

重賞を勝った37頭をすべて見る(増え方の多い順)
馬名測尺→デビューの増え方募集年誕生月体高胸囲馬体重母齢一口価格主な勝鞍通算成績獲得賞金合計
セラフィックコール+55kg(485→540)2021年2月158cm180cm485kg8歳7.5万円24'ダイオライト記念(G2)18戦7勝21,553万円
シックスペンス+55kg(429→484)2022年4月151cm173cm429kg9歳12.5万円26'安田記念(G1)14戦6勝42,069万円
バーデンヴァイラー+50kg(448→498)2019年3月156cm173cm448kg17歳12.5万円23'佐賀記念(G3)20戦7勝15,280万円
ベレヌス+49kg(457→506)2018年3月156cm174cm457kg9歳4万円22'トヨタ賞中京記念(G3)32戦6勝13,882万円
グルーヴィット+48kg(444→492)2017年4月151.5cm173cm444kg10歳9万円19'トヨタ賞中京記念(G3)25戦4勝12,919万円
パラレルヴィジョン+47kg(447→494)2020年2月156cm175cm447kg8歳12.5万円24'ダービー卿チャレンジT(G3)23戦6勝13,898万円
グランディア+42kg(426→468)2020年3月156cm180cm426kg18歳14万円26'新潟大賞典(G3)27戦5勝17,996万円
ワールズエンド+38kg(426→464)2022年2月152cm169.5cm426kg11歳17.5万円26'京王杯スプリングC(G2)11戦5勝19,900万円
シュヴァリエローズ+36kg(402→438)2019年5月154cm166.5cm402kg17歳20万円24'京都大賞典(G2)38戦5勝29,266万円
ヘデントール+34kg(444→478)2022年4月154cm173.5cm444kg9歳9万円25'天皇賞(春)(G1)11戦6勝51,610万円
ザダル+32kg(454→486)2017年2月155cm172.5cm454kg9歳4万円22'京都金杯(G3)16戦6勝16,996万円
ドゥレッツァ+32kg(428→460)2021年4月154.5cm174cm428kg12歳10万円23'菊花賞(G1)13戦5勝47,217万円
ヴェラアズール+31kg(483→514)2018年1月160cm181cm483kg11歳4万円22'ジャパンC(G1)27戦6勝54,968万円
エフフォーリア+27kg(489→516)2019年3月158cm176.5cm489kg10歳7万円21'有馬記念(G1)11戦6勝77,663万円
クリソベリル+26kg(498→524)2017年2月161.5cm179.5cm498kg15歳14万円19'チャンピオンズC(G1)11戦8勝37,960万円
モントライゼ+20kg(462→482)2019年4月152cm175cm462kg10歳7.5万円20'京王杯2歳S(G2)29戦3勝9,522万円
キラーアビリティ+19kg(447→466)2020年1月155cm174cm447kg11歳25万円21'ホープフルS(G1)18戦3勝14,431万円
スキルヴィング+18kg(506→524)2021年3月162cm182cm506kg10歳8.5万円23'青葉賞(G2)5戦3勝7,402万円
フィリアプーラ+14kg(426→440)2017年4月149.5cm175cm426kg16歳5万円19'フェアリーS(G3)16戦2勝5,697万円
ナミュール+14kg(424→438)2020年3月157cm176cm424kg10歳6.5万円23'マイルCS(G1)18戦5勝50,963万円
カテドラル+12kg(452→464)2017年2月155.5cm175.5cm452kg13歳10万円21'京成杯オータムハンデキャップ(G3)37戦4勝22,223万円
ノーヴァレンダ+12kg(512→524)2017年2月159cm185cm512kg14歳7万円18'全日本2歳優駿【国際交流】(G1)18戦6勝11,954万円
クラージュゲリエ+8kg(460→468)2017年2月156cm171cm460kg11歳12.5万円18'ラジオNIKKEI杯京都2歳S(G3)12戦2勝9,299万円
レシステンシア+8kg(482→490)2018年3月153.5cm179cm482kg8歳6.5万円19'阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)18戦5勝44,952万円
ライトウォーリア+8kg(458→466)2018年2月157cm175cm458kg8歳5万円24'川崎記念(G1)40戦10勝31,809万円
タスティエーラ+6kg(478→484)2021年3月158cm176cm478kg7歳7万円23'日本ダービー(G1)15戦4勝65,897万円
コントラチェック+5kg(449→454)2017年4月155cm175.5cm449kg17歳15万円21'オーシャンS(G3)19戦5勝15,089万円
サートゥルナーリア+4kg(484→488)2017年3月156cm179cm484kg15歳35万円19'皐月賞(G1)10戦6勝52,358万円
フェブランシェ0kg(518→518)2021年1月160.5cm183cm518kg15歳6万円25'スパーキングレディーC((G3)18戦6勝11,312万円
サンクテュエール-1kg(443→442)2018年2月151cm175cm443kg11歳20万円20'シンザン記念(G3)16戦2勝7,083万円
パッシングスルー-2kg(462→460)2017年3月159cm176cm462kg11歳5万円19'紫苑S(G3)13戦3勝7,052万円
レイパパレ-4kg(420→416)2018年1月155cm169cm420kg15歳15万円21'大阪杯(G1)15戦6勝39,314万円
マルシュロレーヌ-12kg(458→446)2017年2月156.5cm180.5cm458kg15歳7.5万円21'ブリーダーズCディスタフ(G1)22戦9勝19,327万円
ダイアナブライト-15kg(453→438)2017年1月154cm176cm453kg8歳14万円21'クイーン賞(G3)18戦5勝7,780万円
シュトラウス-18kg(522→504)2022年1月160cm181.5cm522kg19歳12.5万円23'東京スポーツ杯2歳S(G2)15戦4勝10,337万円
ラヴェル-25kg(469→444)2021年2月161cm183cm469kg11歳7.5万円24'チャレンジC(G3)17戦3勝16,594万円
スルーセブンシーズ-31kg(457→426)2019年4月156cm177cm457kg13歳4.5万円23'中山牝馬S(G3)14戦4勝19,170万円

まとめ

今回見たのは測尺からデビューまでの合計の増え方で、月ごとの増減の形まではまだ見ていない。 それでも、近況の数字はデビュー時に何kgくらいになりそうかを想像する材料くらいに見ておこうと思う。

データについて

測尺の馬体重は1歳8月の募集時のもの、デビュー戦の馬体重はレース当日の発表値(netkeibaの戦績表)。 デビュー戦は中央・地方を問わず最初に走ったレース。測尺からの日数は測尺日を1歳の8月中旬として数えている。 比べられるのはデビューした馬だけで、2017〜2022年募集のうち未出走の37頭は入っていない。 成績は2026年9月時点で、勝ち上がりは中央・地方で1勝以上、獲得賞金は中央と地方の合計。

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